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行こか戻ろかイギリス生活

行こか戻ろかイギリス生活

Ballet Nacional de Espana

Ballet Nacional de Espana(「ダンスの世界でしか生きられない生き物」(By Maria Garcia))が有難い事に今年のロンドンフラメンコフェスティバルにやって来た。
このスペイン国立舞踊団(でいいのかな?)、昨年のヘレスフラメンコフェスティバルでそのステージを初めて見たが、メンバー全員のテクニック・レベルの高さ、そして絶対に入団の際厳しい選考基準があるに違いないルックスの粒ぞろい具合がもう美し過ぎて、2階席の遠目からだったが昨年の忘れられない公演のひとつとなった。

今回は絶対近くでその姿を拝見したいと思い、前から3列目中央の席をゲット。今日の公演を心待ちにしてきた。
昨年の公演は、フラメンコと(ま、正統派芸術の象徴という意味で対照をなす意味で取り上げられたと思われる)バレエの間で葛藤する一人の青年の物語仕立てで、こういうストーリ-系のフラメンコが嫌いな私も、その群舞とフォーメーションとメンバーの美しさに感動した。ここロンドンでは、イギリスの客は一歩先を行くフラメンコ演劇はまだ理解できないとの判断があったのか、フラメンコのいろいろなパロを紹介する形で、下記の3部構成のプログラムとなった。

第一部:「Grito」。例のアントニオ・カナレスの振り付けで フラメンコの主要な曲種である、アレグリアス、ソレア等を群舞とソロで30分にわたり見せていく構成。
踊りが始まると、もうそのテクニックの正確さ、これでもかという程のキレ(主に首と腰)を男性女性それぞれ10人ずつが恐ろしいほど同じタイミングで展開していく様に、初っ端から否応なしに引き込まれて行く。私がこのカンパニーで好きなところは、フラメンコらしいパワフルでエネルギッシュな感情表現を勿論一人一人のダンサーが実践しているが、これがフォームの美しさを邪魔しない程度にコントロールされている点。歯の食いしばり方、眉の寄せ方までが、感情の込め過ぎによる不必要な要素が無くて美しい。ま、群舞だからと言えばそうかもしれないが、その抑制のきいた感情表現とテクニックが素晴らしいバランスを保って、パフォーマンス自体を限りなく美しいものにしている。姿勢と、腕の体からの距離のとり方は、自分が出来る出来ないは別にしてとても参考になった。

最初のGritoでもう堪能し過ぎて疲れさえ覚えたが、続いては、現在このBallet Nacional de EspanaのダイレクターをされているJose Antonio自らが、男性のPrincipal Dancer(と思われる)Pol Vaqueroと共に二人芝居的な「Golpes da la Vida」でステージに上がる。
ストーリーは端的に言えばJose演じる人生に絶望した中年の男性が、Pol演じるところの若者にフラメンコを教える(公演パンフによると「古いやり方や伝統を教える」と書いてあるが)うちに希望を見い出すもつかの間、二人に諍いが起こりJoseは若者のもとを去る。その後暫くしてJoseは若者の前に再び姿を現すがお互いにお互いを必要としている事を素直に認められず離別。。といった内容。

このJose Antonio先生、推測するに50歳台半ば、かなり恰幅のいいおじ様で、彼が登場した時は失礼ながら「あれま、踊れるのかしら」なんて思ったが、これがなんのステップといいキレといいPol君に負けないスピード。3回転なんかも披露していてもう驚きの連続。味という点では、正直Pol君を上回っていた。素晴らしかった。
この演目は上で書いた様に物語形式だったが、二人で一緒に踊ったり、別々に踊ったり、絡みのおじさんが若者を叱るような箇所でもあくまでも演技は踊りの一部。ハイ・レベルなダンスの応酬はとても見ごたえがあった。特に二人で踊ったファルーカと、Pol君が一人で踊ったソレア(だったと思う)は良かった。

休憩をはさんでの第三部は、「La Leyenda」と題して、伝説的なフラメンコダンサーのCarmen Amayaをイメージを元に二人の女性Principal Dancerをフューチャーして、またまたタンゴ、ソレア、アレグリア、シギリージャとフラメンコの代表的なパロが続く。
驚いたのは、Principal Dancerの一人が真っ白な長さ7-8メートルもあろうかというパタ・デ・コーラを着て登場した時。もう一人の方は黒の普通の3メートル位のパタ。この超長いパタは、やはりどうも蹴って持ち上げるのは無理な模様で、専ら引きずって歩くか、またはターンをしてクルクル巻きつけ持ち上げていた。私は、いつか片方がこの長いパタの川を跨いで渡る事があるのかと非常に気になって、ちょっと集中できなかった。
それにしても、このPrincipal Dancerの一人(多分Ursula Lopezか)、ため息が出るほど上体の使い方が美しかった。特に腕。随分練習したのか、ものすごい筋肉がついていたが、これは凄かったな。

後半Pol君が疲れていてちょっと残念だったが、たっぷり2時間半の大満足の公演だった。


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